時代はHDRの方向へ---フィルター遊びは?

近年のお遊びフィルターに共通する傾向として、階調を破壊し、色調を故意に崩し、見る者に意外性を与える。
極端に明暗差を付けることで「飛んだ・潰れた」が一枚の中に同居する。
といった点に特徴がある。
本来見えているはずの髪の毛のようなシャドウ部はベッタリ真っ黒に潰し、質感を伝える白いドレスは真っ白に飛ばし、ハイライト部にデータが存在しない。
更に、意図的にカラーバランスを崩し色情報を欠落させているため元に戻すことも困難。
意外性を狙い「いいね!」を集めるためだけの手法が幅を利かせる。そんな時代。
それが良いか悪いか、ではないし、自由に楽しめば良い。個々人の判断だ。
しかし、技術革新は「真逆」の方向に進んでいることを知っておいても良いのではないだろうか。
表示機器(それはモニター画面やテレビ画面など)の狭い範囲しか階調を再現できない媒体に、如何にして豊富な階調や広い色空間を再現するか?といった部分。
今、HDR(high dynamic range)が、更に進化しつつある。
HDRと聞くと、上記のようなお遊びエフェクトの仲間だと思う人が多いかもしれない。
実際の階調は別として、似たようなイメージを作るフィルターは、意外性を狙い「いいね!」を集めるために使われる場合もあるからだ。
本来のHDRは、自然界の広大なダイナミックレンジを狭い範囲しか表現できない表示機器に再現するために明暗差を更に大きく縮め、より豊富な階調を残す。
結果として、より明るく・より暗く、実際の見た目に近づき、臨場感を増す効果を狙う。
印刷物においても目的は同じで、紙の上に再現できる範囲が狭いが故、シャドウを潰さずハイライトにもインキを乗せられるようなデータを作成するノウハウが蓄積されてきた。
階調を可能な限り残し、狭い範囲に明暗差を押し込む画像処理が求められてきたのである。
そして今後も、その手法が「より印象的で更に魅力的な」結果を得る方法であることに違いはないはずだ。
「いいね!」を集めるためのフィルター遊びと、よりアピール度を高めるための写真・映像データを作成するノウハウは、完全に反対の方向にある。
この事実を知っておくことも必要かもしれない。
撮影を楽しむとは?

撮影を楽しむ?
「撮って、フィルター、SNSにあげて、いいね!を集める。」ことでしょ?
はい。大いに結構です。
だが別の世界もある。
どちらが良いか悪いか、ではない。
-----大きな背景ボケが欲しい。
ならば、レンズは望遠系、絞りは開放近く、被写体と背景との距離は大きく。
-----ストーリー性が欲しい。
ならば、光の向きと質を考えて。露出はアンダー目が良いかもしれない。
フォーカス位置は人差し指?いや、やっぱりレンズの文字部分でしょ。
-----さらに語るには。
Photoshopでホワイトバランスをシフトし、暖かい日差しを感じる色温度に。
階調を豊富に、シャドウは潰さず。ハイライトは強めでもいい。
欲しい絵と必要な設定、そして撮影時点でのアクション。
続く画面上でのデータの作り込み...。
平成のこの時代、それぞれのステップごとに楽しみは無限に広がる。
こうしたレガシーな部分でも、デジタルの恩恵と自分らしさを盛り込むスペースは豊富にある。
人と同じフィルター、人と同じフィールド「以外」の楽しさを、もっともっと多くの人に知ってもらいたい。
そのフィルターに意図があるのか?

もう随分と前のメールに記載された一言。
「フィルター嫌いの先生はご覧にならないかもしれませんが、よろしければ見てやってください...。」。
最近、この方のアカウントは消えBlogも無くなった。
フィルター万歳!だった人。
単にフィルター処理そのものの好き嫌いで言うのではなく「そのフィルター適用に意図が見えない」から評価できないのである。
なぜ、その色カブリを発生させるのか?
なぜ、その階調を破壊するのか?
なぜ、そのコントラストを破壊するのか?
適用する理由が見えない。
もう耳タコだが、パッと見の意表をついて「いいね!」を集め、トラフィックを増やすためのマーケティング手法の媒体に、こともあろうか写真が使われてしまった...。
だから意外性だけを与えればそれでいい。
そんな時流。
しかし、こうしたフィルターを適用している作品に「明確な意図が見えない」。
だから写真作品としてのアピール力に欠けるのである。
結果として、汚さだけが表出し、料理写真は腐敗する。
この点がガッチリと押さえられている作品は見る者にメッセージが伝わる。
単にフィルターが良いか悪いか?ではない。
あり得ない階調や色彩を盛り込み、ギラギラの画像処理をしてみても良いと思う。
画像処理は撮影とセットで考える時代。
そこにメッセージが込められているならば...。
プリセットフィルターの限界

このBlogで頻繁に話題に上るスマホのプリセットフィルターやエフェクトについては、かなりネガティブな認識を持っているが、それが良いか悪いか、といった議論をするものではないこと、毎回始めにお断りをしている。
そもそも「これはいいね。あれもいいね...。」と八方美人的に書いていると、結局そのBlogオーナーの顔が見えなくなる。
HDR OnのiPhoneカメラで撮影、Photoshopにて調整。
元がOne Shotのデータなので広大なダイナミックレンジを凝縮した処理ではないが、望めばこうした結果も作り出すことは可能になる。
このような処理プロセスを知らなくても、スマホにあるプリセットのフィルターを適用すれば似たようなイメージを手に入れることができるかもしれない。
それも一つの楽しみだろう。
ただ、「どのようなパラメータをどう処理すれば、どの部分がどう変化するか?」
といったディレクションができると、プリセットにはない望む結果を手に入れることができる。
フィルター万歳!だった人がSNSから姿を消しBlogも閉鎖。
もう写真から離れてしまったのだろうか?
濃い味や意表をつく結果だけに頼ると、飽きるのも早いかもしれない。
写真趣味は、気長に、いつまでも楽しみたいものだ。