デジタル時代のアンダー露出を考える

「アンダー気味に」という言葉にピンと来る方は、ポジ(リバーサル)フィルムに親しんできたご経験があるのではないだろうか。
ポジでの撮影は、オーバーになると飛んでしまいベースが透けて見えるただの透明フィルムになるため、いつもアンダー気味で、というのが定説であった。
以前にも記事を書いたことがあるが、ポジフィルムはアンダーで撮ることで彩度が上がり、より味わい深いコクが出る傾向があった。
同時に、下の部分(暗い方向)の階調も残せるキャラクターが良いとされた。
デジタルでは、単純に露出を切り詰めて行くと、低い部分の階調が失われてしまうことが多い。
これは、下の階調を潰すことにより暗部ノイズを目立たなくするためであろうと想像できる。
下のガンマカーブを上げたプロファイルを作って撮ると、盛大にノイズが浮いてくることでそれが判る。
フィルムらしさ、というのが、今、再びハヤリだとか。
ガンマカーブを触ることで、フィルムライクな絵づくりも可能になるかもしれない。
ミスマッチなエフェクトは必要ない

一つ前の記事【「不快感」を与えない写真】でも書いたが、「撮影後の写真にはエフェクトを掛けなくてはならない」と勘違いしている人が増えているようだ。
素材を活かすエフェクトなら自由に楽しめばよい。だが、どう考えてもミスマッチなフィルターであるのに、それを必要なプロセスとして適用している。
今ではほとんど見かけなくなったが、その昔には、白ご飯に塩を大量に振りかける人や、素材の味が判らなくなるほど大量にソースや醤油をかける人を目にすることがあった。
webには素晴らしい写真作品も数多い。
なのに、その素材の持ち味を台無しにしてしまう間違ったエフェクトを使っている人が増えてきた。
場違いな「お化けメイク」の次は、ソース漬けにされた高級レストランの一品料理...。
今、webに溢れ返る写真は、味覚が麻痺したシェフが作る「自分だけにしか判らないこだわりの一品料理」。
そのメニューを考え料理したシェフの店は、早晩立ち行かなくなるのではないだろうか。
この写真も「十分に濃い味付け」になっている。
これ以上にスパイスはいらない。