プロはコスト意識が必要

いつもながら、写真を志す...という学生さんに数多く訪問・御意見をいただく。
今日は特にそのような方に向け「コスト意識」について書いてみたい。
「やっぱりカメラはプロ仕様機材が必要ですよね?」
「機材はどれくらいの予算のものが妥当でしょうか?」
よく聞く質問である。
激しく勘違いしているのは、プロ機って何?ってこと。
メーカーが耐久性や精巧さを保証して出荷しているものを指しているのだろうが、それを使うか使わないかは仕事の成否とほとんど関係がない。
ハッキリしていることは、
その機材を使わなくては撮れないのか?
ということである。
画質の大部分はレンズで決まる。
勿論、ボディが何でも良いとは言わないがレンズにはお金をかけた方が良い。
ボディは、連写性能が必要だとかの用途によってはそれなりの機材が必要だろうが、でなければフラッグシップは必要がない。
プロ機といわれる機材は、耐久性や精度に優れた点があるのは事実だろうが、自分がこれから撮って行く被写体が何なのか?
そして受注した仕事のアウトプットがどの程度の品質・どの程度の価格ゾーンにあり、客先から何を求められているのかをしっかり見極めなくてはならない。
事例を他のフィールドに移してよく考えてみればよい。
例えば運送業。荷物を如何に効率よく確実に届けるか。 これが運送業の仕事である。
では、配送に使う車は何が良いのか?
馬力もトルクも絶大なスペックを誇るスポーツカーがいいのか?
その答えは小学生にも判る。
もちろんスポーツカーで配送しても構わない。
私が言いたいのは、この次の言葉である。
「仕事にかかるコストの意識」
できるだけ安く維持できる車両で、できるだけ安い燃料代で、できるだけ短い時間で配達しなければ自分の手元に残る利益は減少する一方である。
撮影機材においても、原則は同じである。
こう書くと、こんな言葉が返ってくるだろう...。
「そうは言っても高い機材でなくては万が一データが飛んだら」
「リスクヘッジの為に高額な機材を使っている」 とか...。
そのために機材の二重化やメモリーカードの分散をしているのである。
それにフラッグシップ機以外の機材が信頼性に欠けるとは言えない。
新導入の機材を実際に使用する前には、テストを繰り返し自分自身で検証している。
先般の40Dでもそうである。仕事に使う前にテスト撮影で5,000ショットを超えるレリーズを繰り返してから投入している。
また、確実なメンテナンスも忘れてはならない。
メーカーのイメージ戦略に惑わされてはいけない。
写真に関する機材は、趣味の世界にも通じている。
趣味の世界には、コストという言葉が存在しないのである。
(酷いのはオーディオの世界にあるケーブルの類。線一本で乗用車が買える!これはまた別の機会に...私はそんな世界とは無縁だが)
仕事と趣味の境界線は、このコスト意識にある。
商道徳に反して偽装が蔓延するのも、できるだけコストは安く上げ、利益は最大化したいからではないのか。
(ある部分では間違いではないが)高額な機材を使ったら高品質な画像が出るとは限らない。
商売に対するコスト意識。
そして、使用機材を最大限に使い切るスキルとテクニックを磨き、感性を鍛えるのが先ではないだろうか。
(「撮影教室」近日中にご案内できる予定です)
今日の写真は、ウェディング会場入り口のウエルカムボード。
もう5年目を迎える老体ボディでも、ハイライトの白飛びを極力抑え、シャドウの階調を生かす撮影は可能である。
2008/02/01(Fri) 15:43:50 | others