
あるホールでのレコーディング風景。
「ダイナミックレンジ」と聞くと、音響的な表現幅のことに意識が行く。
「ラティチュード」と書くと、フイルムの明暗幅のことかと思う。
いずれもコトバの正確な意味は別として、慣例的にこのような意味合いで使われているのではないだろうか。
写真がデジタル化し、データの表現幅を示す言葉として「ダイナミックレンジ」が多用されるようになった。
RGB各色256階調の表現幅で256の3乗=1677万色。
(これもPCディスプレイでおなじみの表現だと思う)
この範囲をダイナミックレンジと表現しているようだ。
オープンリール媒体による、いわゆるテープレコーダー世代から録音と接点を持ってきた人間としては、写真にダイナミックレンジという言葉がどうもしっくり来ない。
さて、この画像。
新型デジ一眼か?と思われた方も多いかもしれない。
ホール内は、これだけ暗いにも関わらず潰れていない。また入り口の床が完全に飛んでいるのに、窓の外は木々の緑はなんとか階調が認められる。
ポジだと多分無理だ。露出値を変えて撮影し、後からスキャンしたデータで合成することになる。
最新デジ一眼ボディは、高輝度域の階調が生かせるとか14bit処理だ16bit処理だ、とセールストークが派手である。
しかし、自然界の明暗幅は、もともとその範囲に収まるものではないハズだ。
この画像はもう4年選手の10Dで撮影している。
画像データはPhotoshop上で、この狭い256階調の中に収まる(実際は収まってはいないが、見た目には)ように調整しているから、明暗ともに見えるのである。
最新機材のセールストークのようにデータ化される幅が広いのはもちろん歓迎すべきことである。
もとからデータ化されていないものは再現のしようがないからである。
が、その数値に一喜一憂しても仕方ない。
音の世界では、はじめから強弱の強大なダイナミックレンジをレコードやCDに収めるのは無理であった。
音楽CDはそもそも16bitの規格であり最弱音から最強音までの幅が再現されているように「見た目」(音だから「聞いた耳」?)圧縮されていることがほとんどである。
このコンプレスという作業以外にも、24bit収録データを16bitにディザリングしている。
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圧縮というと、データファイル容量としてのmp3等のことを思い浮かべるかもしれないが、それとはフィールドが違う。この話はまた別の機会にしたい。
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この日、ワンポイント2chと、ピックアップ1chの3トラックを収録。
ご覧のとおり、NOS方式のセッティングである。
機材は無造作に椅子の上に置いてはいけないのだが、机も無かったのでこのまま進めた。
LunatecV3は発熱がかなりあるので、このあと底面に空気が通るように持ち上げた。
もちろん、このレコーディングも私の大切なお仕事。
「記録する 形に残す」
このコンセプトで表現される事項は全て私の事業として展開している。
仕事はデータハンドリングのことがキッチリとわかる人間に集まるべきだと考えている。
私の知名度は低いが、色々な方からのご紹介もあり、急速に仕事の幅が広がりつつある。
機材も、そしてお恥ずかしながらスキルも少しずつではあるが進展しているはずだ。
いままでの成果物とは異なるアウトプットが可能になってきた。
価格とwebサイトの見た目だけで発注先を決める時代はそろそろ終わっても良いのではないか?
ダイナミックレンジ。
音と写真が、妙なところでクロスオーバーする。